ピクサー新作「2分の1の魔法」見どころ・ネタバレ・感想を紹介!

2020年8月3日

Pixar 最新作 「2分の1の魔法」(Onward)を日本公開前に一足先に視聴してきた。ピクサーの映画おなじみの、涙を誘うシーンに涙を流しながら、温かい気持ちで映画を見終えることができる、相変わらず素晴らしい映画である。今回は、公開まで待ちきれない、そんなあなたのために、見どころ、あらすじ(ネタバレ注意)、感想、海外の評価などをまとめていく。

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監督の実体験にもとづいた兄弟愛の物語

この映画は、今回のプロデューサー・監督を務めたDan Scanlon の実体験にもとづいている。Dan 監督は、自身が1歳のときに父親を亡くしており、彼にも父親の記憶はない。当時3歳だったDan監督の兄も、まったく父親の記憶がないというのだ。Dan監督と兄は、このことを悲しいと思っていないというが、いくつかの父親の写真やテープレコーダーから、父親がどのような人であったかを知ったそうだ。劇中でも、いくつかの父親の写真と、テープで、必死に父親と近づこうとするイアンの様子が描かれる。Dan監督と兄はかなり仲がいいらしく、実際に劇中でイアンと兄バーリー は正反対の性格を持つ者の、仲よくやっている様子が描かれる。というより、バーリーは、かなりの弟思いだということが、惜しみなく描かれている。

登場人物

イアン・ライトフット(声:Tom Holland/志尊淳)

家族思いで、心優しく繊細な青年。 亡くなった父親を尊敬しており、父親さえこの世の中にいればもっと人生はすんなりとうまくいくはずだと考えている。16歳の誕生日を迎え、自分を変えようと決意する。

バーリー・ライトフット(声:Chris Pratt/城田優)

イアンの兄バーリーは、イアンと正反対の性格の、陽気でむこうみずな性格。彼いわく「歴史に基づいて作られた」カードゲーム/ボードゲーム"Quest of Yore"にはまっている魔法オタクで、魔法に関する知識が豊富。「 グウィネヴィア 」と名付けられた、ユニコーンが派手に車のサイドに書かれたおんぼろのバンを愛用している。父親との記憶を、三つ持っている。

ローレル・ライトフット=母(声: Julia Louis-Dreyfus /近藤春奈)

子供たちを優しく見守るアクティブで、愛情深く、力強いお母さん。

コーリー(声:Octavia Lenora Spencer/浦嶋りん子)

かつては恐れられたマンティコアという怪物だが、今はコーリーという名でレストランを経営する陽気なおばちゃん。炎を吐いたり、するどい爪でひっかいたりと本性はかなり獰猛。あることから、冒険に参加することに。

ウィルデン・ライトフット (声:Kyle Bornheimer)

イアンとバーリーの父親。イアンがお母さんのお腹にいた時、バーリーが3歳の時に病気で亡くなってしまう。

コルト・ブロンコ (声:Mel Rodriguez/村治学)

ケンタウロスの警察官。ローレルの恋人。ケンタウロスだが、足を使おうとせず、車で町中をのりまわしている。

ストーリー

主人公イアンの16歳の誕生日におきる奇跡

物語は、エルフやケンタウロス、ピクシーなどの「おとぎ話」にててくる生き物たちが「現代」で生活する町ではじまる。生まれる前に父親を亡くしたイアンは、父親を写真とレコードされた声でしか会ったことがなく、年を重ねるたびに、父親への思いはつのらせていた。イアンの16歳の誕生日、父親の大学のトレーナーを着てレストランに出かけた際に、ふと父親の大学時代の同級生に会い、彼から父親が「大胆で勇敢な性格だった」と知らされる。このことをきっかけに「父親のようになりたい」と決心したイアンは、16歳を迎えるにあたって「達成したいことリスト」を作る。リストの中には、「友達を誕生日パーティに誘う」や「もっと自信をもってふるまう」など彼が達成したかったことを書き連ねるものの、すべて裏目にでてしまい、思い通りにいかない。やっと学校の人気グループをパーティに誘えたものの、爆音を響かせながら悪目立ちするおんぼろバンで迎えに来た兄バーリーに恥をかかされ、失望してしょんぼりと家に帰る。変われない自分と会えない父親への失望感にさいなまれていたところ、母親が「あなたたちにお父さんから渡してくれと頼まれたものがある」といって、二人に長い巻き物を渡す。中には、木で作られた杖と、オレンジ色の宝石と、父親からの手紙が入っていた。その手紙には、呪文と、杖と宝石があれば、父親を一日よみがえらせることができると書いてあった。期待に胸をふくらませたバーリーは何度も父親をよみがえらせようとしたがうまくいかず、家族全員があきらめかけ、しょんぼりしたイアンが一人で呪文をつぶやくと、杖が光りだし、魔法がかかりはじめた。なんと、父親の下半身が表れ始めたのである。かけつけたバーリーと二人で呪文のゆくえを見守るが、魔法の石が途中で壊れてしまい、そこには下半身だけの父親の姿が。何が起こっているのか見ることも聞くこともできず戸惑う父親に、バーリーが彼との思いでの一つ、足を鳴らしてリズムを父親の足の上で刻んでみる。すると父親は二人の存在に気づく。しかし、このままでは24時間後に父親の下半身までも消えてしまうため、なんとかして父親をとりもどすために、二人はあらたな魔法の石を探す旅にでることを決心する。向かう先は、イアンが持っている「歴史に基づいた」カードゲームQuest of Yoreに書かれた魔法の石のありかがある古びたレストラン。たかがカードゲーム、、と半信半疑のイアンの背中を押し、バーリーは下半身の父親を連れ、母親に置き手紙を残し、残された時間で旅に出る。

onward!  呪文の腕をみがきつつ、宝石探しの旅へ

バーリーはQuest of Yoreの呪文が詰まった本を持ち出していたため、イアンは道中呪文を練習するものの、なかなかうまく行かない。バーリーは「心の底から」となえることが大事だとアドバイスをするものの、イアンはがっかりしてあきらめかける。父親の隣に座ったイアンは自分の手帳を取り出し、「お父さんとしたいこと」リストを父親の前で開き、絶対かなえてみせる、と心に誓う。二人が向かった先は、「マンティコアの酒場」という名のマンティコアという恐ろしい怪物がいるはずのレストラン。二人が実際に建物の扉を開くと、そこはファミリー向けのごくごく普通のレストランに変わっていた。恐ろしいはずの怪物マンティコアもコーリーという名前で、ごくふつうのレストランの経営者として働いていた。イアン達はレストランの宝石のありかを示す地図を見つけるが、「危険が伴うから」とコーリーは地図を二人に渡そうとしない。そこでイアンが本当はコーリーは勇敢で恐ろしい怪物だった、と過去を思い出させるような言葉をかけると、コーリーは封印していた「危険をおかしてこそ最高の冒険ははじまる」という自分のモットーを思い出し、過去の自分を取り戻すかのように暴れ始め、レストランから人を追い出し、噴き出した炎でレストランを燃やし始めてしまう。命からがら逃げ出したと思ったイアン達だったが、父親を引っ張っていたロープがほどけ、父親が燃え盛る店内にとりのこされてしまい、頭上からは今にも崩れ落ちそうな木の柱が。イアンは、父親を救うためにイチかバチかで新しく覚えた物を浮遊させる呪文をとなえると、木の柱が父親の上におちる寸前で止まり、父親を救うことに成功した。呪文が成功した、と有頂天の二人だが、次の目的地Raven’s point( 不死鳥の指す所)へ向かい始めた矢先、ガソリンが切れてしまう。ほとんど空っぽのガソリンを「大きくする呪文」をイアンが唱えるも、逆発動してバーリーが小さくなってしまう。仕方なくあきらめてガソリンスタンドへ向かうが、暴走族のように夜中のガソリンスタンドを荒らしているピクシーたちの怒りをささいなトラブルで買ってしまい、追いかけられる羽目に。小人になってしまったバーリーは運転できないため、運転恐怖症のイアンは仕方なく高速を運転することを決意し、ハイスピードの中戦いを繰り広げる。何とかピクシーたちを振り払ったとき、バーリーも元通りのサイズにもどり、二人はRaven’s point を目の前にして大きな渓谷に行き着く。橋が向こう岸でとまっているため、イアンは、兄のサポートを借り、100メートルはあろうかという大きな谷を、心で思い描くことによって現れる橋を出現させる呪文を唱え、向こう岸につくことに成功する。このころには、イアンは、だいぶ自分への自信がついてきていた。橋を下ろして三人とも向こう岸に合流すると、そこで家出をした息子達の捜査依頼をされていたコルト・ブロンコが、三人を家まで帰そうと追ってくる。残り時間も迫っており、引き返す道はないと強く心に決めたイアンは、猛スピードで何台ものパトカーを振り切り、不死鳥の口ばしがさす方向へ、進んでいく。最後の不死鳥がさす場所は、渓流の奥。三人は、奥へ進んでいくことを決心する。一方、息子たちが心配で車で追っていた母親は、コーリーのレストランで彼女から息子達の居場所をつきとめることを手伝ってもらうことを約束し、途中強力な威力を持つ聖剣をお店から取り戻し、彼らを助ける準備を進めていた。

渓流の奥、その先へ。。。

三人は渓流の奥へ進んでいくが、何キロも続くであろう水路を歩いてすすむことは時間がかかりすぎる。そこでバーリーが持っていた水に浮くスナックをイアンが大きくし、船のようにして進むことに成功する。川を上っていく中、バーリーは実は父親との思い出は四つあり、その四つ目は病気でチューブにつながれた父親の病室へ入りお別れを言うことができなかった思い出だから、それ以降何も恐れないようになると誓った、とイアンに打ち明ける。川を上り切った三人は、触るものをとかしてしまう巨大な液体の塊、飛んでくる無数の矢、水位が上がる部屋を切り抜け、宝石が待つはずの洞窟のその先へ、扉を開ける。

待ち受けていたのは、、父親との感動の再開へ

扉をあけると、なんと目の前に広がる場所はイアンが通う高校の目の前だった。途方にくれる二人。イアンは、バーリーのいんちきなカードゲームにしたがったから父親ともう会えないのだとバーリーを責め、最後のわずかな時間だけでも父親といたい、と二人でその場から去ってしまう。あきらめきれないバーリーは、高校の目の前の古びた遺跡を、くまなく探し始める。すると、最後の不死鳥の置物の所で手に入れた遺跡のかけらをはめるくぼみが。一方、父親としたかったリストを手にして、父親と横に座って海を見つめ、悲しみにくれるイアンだったが、ふと父親とのリストの項目を眺めていて思う。「キャッチボールをすること」、「腹をわってはなしあうこと」、「運転を教えてもらうこと」「笑いあうこと」。。ハッとするイアン。これって、全部今日バーリーとしたことだ、、、。そして、リストの最後にあった、「人生を分かち合うこと」に目をやると、小さいときからずっとそばにいて支えてくれたバーリーとの思い出が走馬灯のようにかけめぐった。兄であるバーリーこそがぼくの大切な存在だったんだ !そう気づいたイアンは、遺跡のかけらをはめることで、出現した魔法の石を手に入れることに成功したバーリーのところへ向かっていく。バーリーの喜びもつかの間、あたりから赤い煙が表れ、一直線に高校へ向かっていった。それは、魔法の石にかかっていた呪いだった。高校のなにもかもをはぎ取り、パーツをあつめ、赤い煙は、みるみるうちに巨大なドラゴンに変わっていた。逃げるバーリーが追い付かれそうになった時、聖剣を持った母親ローレルが、コーリーの背中に乗って現れた。ローレルは、心臓の部分に聖剣を貫けば、呪いは解けるという。二人が父親と会えるようにと、ローレルは勇ましく戦い、心臓に剣をさすことに成功するが、その圧力に、ずっとは持ちこたえていられない。24時間がもう少しで経過しようとしているとき、イアンはバーリーが手にした宝石を杖にはめ、呪文をとなえる。みるみると体を取り戻していく父親。しかし、母親がふきとばされてしまい、ドラゴンは三人のいる場所へ向かい始める。イアンを一度でも父親に合わせようと、自分がドラゴンを食い止めると言うバーリーを制し、イアンは自分にはバーリーがいるから、代わりにお父さんに会ってほしい、とドラゴンに立ち向かっていく。練習した魔法を駆使しながら、母親から剣を受け取り、心臓をねらう。しかし、そこで杖が魔法の威力で吹き飛ばされ、海へ落ちてしまう。このままでは父親が戻らなくなってしまうと思ったイアンはバーリーの言葉、「冒険では、周りにあるものは何でも使うことが肝心」を思い出し、手のひらにのこっていた魔法の杖のかけらを呪文で大きくし、父親を復活させる呪文をとなえきる。バーリーたちに猛突進していくドラゴンを食い止めるために、イアンは最後の力を振りしぼって、ドラゴンをやっつける。バラバラになったドラゴンのがれきの隙間から、イアンはバーリーと復活した父親の姿を見守る。父親はイアンを見ることはない。それでもイアンは、切なそうでも安堵の表情を浮かべて、二人の会話を見守っていた。バーリーと父親は、ほんの少し言葉を交わした後、ぎゅっとハグをして、父親は去っていった。

バーリーはイアンに、父親がイアンをすごく誇りに思っていると言っていたと伝え、最後に、父親から言われていた通り、イアンをぎゅっと抱きしめる。イアンも、最初は驚いたようだったが、すぐにぎゅっと抱きしめ返した。

魔法のかかる町

時は流れ、エルフたちが住む町は、すっかりと「魔法がおきる町」に変わっていた。イアンはドラゴンとの奮闘の様子をクラスメイトに語って、一躍人気者に、コーリーのレストランはピクシーたちの力もあって魔法が飛び交う素敵なレストランに変わっていた。母親と、今となっては正式なボーイフレンドであるコルト・ブロンコは、仲睦まじく、コルト・ブロンコは「本来の姿」であるケンタウロスとして、さっそうとかけて仕事へ向かっていった。イアンとバーリーは、新しいグウィネヴィアに乗り込み、空をかける車で、新たな冒険に出かけるのであった。

考察

呪文を覚え、魔力をとりもどすキャラクターたちを描く意味

優しいこころを持っているが臆病な青年(もしくはいじめられっ子)が、自分の秘めた力に気づき、周りに影響を与える、というシナリオはよくあるが、今回も気弱なイアンが、次第に自分に自信がついていく様子が描かれている。劇中、イアンが新しい魔法を覚えるシーンがいくつも描かれるが、イアンはまず「自分にはできるはずがない」というセーブを自分にかけてしまっているため、2、3回失敗するとすぐあきらめてしまう。しかし、常にあきらめず応援してくれる兄の存在、父親に会いたいという一心が、そのセーブしていた蓋を開け、本当の力を発揮する。イアンが魔法を覚えるだけにとどまらず、真の力を取り戻したコーリー、羽が退化したことで「飛べない妖精」から飛べる妖精(普通はそうである)に戻ったピクシーたち、俊足を取り戻したケンタウロスのコルト・ブロンコなど、自分には無理だ、と限界や常識にとらわれていた自分たちをそれらから解放し、真の力を取り戻すキャラクターたちが存分に描かれる。

監督のDanの言葉に、 このようなものがある。

“Magic is a metaphor for their potential. In order to do magic, you have to take risks. You have to believe in yourself. You have to trust yourself. You have to listen. No matter what magic Ian does, he always has to be challenged in a way that allows him to grow.”

「魔法は彼らの秘めた力の比喩にすぎない。魔法を起こすには、リスクを負わなければならない。自分を信じなければならない。自分を信頼しなければならない。(周囲の声に)耳をかたむけなければならない。イアンのかけるどんな魔法も、彼自身を成長させる試練を乗り越えた証なんだ。」

(ピクサー公式ホームページより引用 https://www.pixar.com/onward

この言葉につきると思う。魔法をおこすには、リスクを乗り越え、自分を信じ、周りを信じる。だkら、魔法はmagicなのだ、と、ファンタジー映画の根幹を表すような深い言葉である。Danのいう通り、この映画は、それぞれが試練をのりこえて本当の自分に気づく(それが魔法)、最初から最後までマジカルな映画なのである。

魔法を使えるのは、なぜバーリーじゃなくてイアンなのか

作品では、バーリーがどれだけ魔法オタクかが描かれ、バーリーが心からファンタジーや魔法を愛しているということがわかる。しかし、どんなに呪文をとなえて頑張っても、すんなりと魔法をかけられてしまうのはイアンなのである。かなり皮肉な状況のように思えるが、考えてみると、イアンは、バーリーなしでは決して魔法はかけられなかった。幾多の呪文を知っているもバーリー、魔法使いの心得をイアンにあきらめずに伝えられるのもバーリー。イアンは、バーリーの力を借りて、自分を信じれば魔法はかけられる。ここまで見てくると、魔法は、イアン一人がかけるものではなくて、バーリーと二人でかけていることになる。二人で一人の魔法使いなのである。いうなれば、バーリーが頭脳で、イアンが肉体である。どちらかがかけたら魔法はおこらない、そんな特別な魔法を、ピクサーはこの映画にかけている。

巨大ドラゴンは、なぜ高校のマスコットの顔?

あくまでも筆者の感性によるのだが、本編最後の巨大高校マスコットドラゴンは、ある比喩ではないだろうか。思い出してほしい。イアンは、16歳になったその日、父親の大学時代のグリフィンのマスコットが書かれているトレーナーを着た。これは、イアンが父親をいつまでも追いかけている(神格化している)わかりやすい証拠である。呪いが学校にかかり、姿を現したドラゴンは、壁画からはぎ取った高校のマスコットの顔が特徴の、凶暴な怪物である。なぜ、ここでイアンの高校の愛すべきマスコットが怪物に進化するのか、筆者は何かしらの意味があるのではないかと思い、考えをめぐらすと、父親のトレーナーとリンクするのではないかと気づいた。イアンが戦ってやっつけなければならないドラゴンは、父親の大学の象徴のマスコットとリンクする。高校のイメージや父親のイメージに近づくのではなく、ドラゴンを倒すことでそのような期待を乗り越えて、自分の力で未来を切り開く、イアンの最後の成長が表現されていたのではないかと考えている。

感想(ネタバレ含む)

ピクサーの一番最近の映画、COCO(リメンバー・ミー)で大泣きしてしまった筆者は、また泣いてしまうのではないかと半分不安になりながら鑑賞したが、案の定泣いてしまった。バーリーのいつまでもイアンの見方であるところと、自分の過去とイアンの向き合う素直な心に、熱く胸を打たれた。今回のテーマは、監督のDan Scanlonが言う通り、「自分で限界を決めないで」ということ、「「誰」と一緒であるか」が大切なのではなく、自分を見守ってくれているのは、側にいつもいてくれる人」の二つだったと思う。映画を娯楽以外に人生の糧としてとらえるようになった筆者は、限界を決めることによって周囲も失望させてしまうし、自分の可能性も狭まってしまい、続ければいいことが起こるかもしれないのに、「諦めたらそこで試合終了」であることを深く実感した。そして、イアンの「お父さんとしたいことリスト」の最後の項目ではないが、自分が「生涯を分かち合える人」とは誰なのだろうか、考えさせられる。それは、両親じゃなくてもいい。血がつながっていなくてもいい。この時代、海外にいる友達でもいい。そばにいてもいなくても、気にかけてくれる人、そんな存在がいるだけで、幸せなのだと再び気づかせてくれる作品だった。筆者は個人的にはこの作品は、"Relatable"(自分が共感できるかどうか)かどうかが、評価を分けると思っている。 見失っていたことに気づいた瞬間、人に感謝するとき、誰かがいたことで「ありがたい、うれしい、幸せだ」と思える何か熱いものが流れる感覚に覚えがあったら、この作品の意図は視聴者に伝わったのではないかと考えている。もちろん、ピクサーが描く「愛と絆」にも、心を動かされてしまうのだが。

キャストに関してだが、今回は、豪華すぎるハリウッドスターたちが声優ということに、鑑賞してから気づいたが、それほどハマり役だったということだろう。トム・ホランドは、ポテンシャルを秘めたごく普通の男の子、を演じるのが非常に上手であるし、クリス・プラットに関しては御年41歳にして19歳のバーリーを演じるという離れ業。もちろん、まったく違和感はない。(紛れもなくこの二人はMarvelのスパイダーマンとスター・ロードである。) オクタヴィア・スぺンサーのマンティコア、コーリー役など、よくもここまで俳優の才能や感じと合致したキャストができるものだ、と感動したほどである。日本語の吹き替えは志尊淳に城田優、ハリセンボン近藤春奈と、またテイストが変わっているので、ぜひ日本語での吹き替えバージョンも楽しみたいと考えている。

最後におまけとして、独断と偏見で選ばせていただいた名言を、下に紹介しておく。

今作品中の筆者的名言

“On a quest, the right way isn’t always the easy one.”

「正しい道が近道とは限らない。」

バーリーが冒険で大事にしている言葉。この言葉は、常識にとらわれずに考えることが新たな冒険の鍵を開ける、という現代人が忘れがちな大切なことを詰めこんだ言葉だと思う。

“I never had a dad, but I always had you.”

「僕にはお父さんはいないけど、お兄ちゃんがいるから。」

イアンが、自分にとって大切な存在はもう会えないお父さんなのではなく、小さいときからずっと見守ってくれていたバーリーなのだと気づいたときの言葉。自分がお父さんと会いたいという誰よりも強い気持ちを持っているのに、バーリーに父親との時間をゆずる、兄弟愛の一番よく表れた言葉。

海外の評価

ここで、実際に公開された海外の評価を紹介していきたい。

欧米の最大映画評価サイトTomato Meter で88%フレッシュaudience scoreは 95 % IMDb 7.4 と、評価はなかなか高いようであるが、 metacritic で61 の評価など、「ピクサー映画として相変わらずの満足度だ」、または「ピクサーにしてはいまいちだ」、と評価する人たちに分かれるようだ。それだけ、ピクサー映画の期待値は高いということだろう。

下記では、アメリカの有名紙での評価を見ていこう。

●ニューヨークタイムズ

This road movie set in a world of elves has its moments, but by Pixar standards, it doesn’t quite cast a spell.

Ben Kenigsberg、The NYTimes

エルフたちの世界のロードムービーということでさすがといえる部分もあったが、ピクサー映画の基準で考えたら、いまひとつといえるのではないだろうか。

●ファーストポスト

Even as it’s populated by some interesting animated elves, Onward’s overall look never manages to rise above average.

Prathap Nair、 Firstpost

どんなにエルフたちが活躍しようと、平均以上を超えた作品といえないだろう。

●ワシントンポスト

“Onward” isn’t even close to top-shelf Pixar. But judging it on its own merits, it’s an often funny, genuinely moving story.

Kristen Page-Kirby、 Washington Post

ピクサーの名作には程遠いといえるだろう。しかし、作品の革新の部分はよく伝わっており、愉快で、心の底から感動できる作品だ。

と、なんとなくパッとしないイメージであるが、筆者としては、ピクサー映画ならではのハラハラドキドキ、最後には感動というフルコンボを体感できたので、大満足である。日本での評価がどうなるか、気になるところである。

近作品で、また新たな冒険へ連れて行ってくれたピクサーには、感謝しかない。今後も、ピクサー映画に大いに期待したい。

注)このレビューは、英語で鑑賞した感想をもとに書いているため、日本語とか訳がずれている可能性があります。ご了承ください。

参考文献

https://www.pixar.com/onward

https://www.rogerebert.com/reviews/onward-movie-review-2020

https://www.cbr.com/onward-ending-explained/

https://www.usatoday.com/story/entertainment/movies/2020/03/07/pixar-onward-spoilers-true-story-behind-emotional-ending/4955271002/

https://www.google.com/search?q=onward+character&sxsrf=ALeKk00Zz7TXjVjob4ZADf38qch1vIlJbQ:1595856479854&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=2ahUKEwj9m-DUxO3qAhXQUt4KHaABAsoQ_AUoAXoECCcQAw&biw=1366&bih=657#imgrc=RaiVGBvT9eQ_hM

https://pixar.fandom.com/wiki/Onward?file=Onward_poster_%282%29.jpg

https://www.vanityfair.com/hollywood/2020/03/true-story-pixar-onward-father

https://butfirstjoy.com/pixar-onward-movie-quotes/

https://villains.fandom.com/wiki/Curse_Dragon

https://ja.wikipedia.org/wiki/2%E5%88%86%E3%81%AE1%E3%81%AE%E9%AD%94%E6%B3%95